◇消費者トラブルQ&A

 

消費者トラブルといっても様々な事案がありますが、例えば、市区町村に設置される「消費生活センター」に寄せられる苦情や相談には下記のようなものがあります。

 

 

 

相談① 勝手に送られてきた書籍

 

 

 

Q.高額な書籍が知らない業者から代金引換で送られてきたのですが、家族の誰かが注文したものと勘違いし、代金を支払って品物を受け取ってしまいました。どうしたらいいでしょうか。

 

 

 

 

A.ネガティブオプション(送り付け商法)と呼ばれるものです。この場合、書籍を受け取った方は単なる勘違いで受け取ったのですから、そこには「契約の申込に対して承諾をした」という意思表示はありません。従いまして、この売買契約は「錯誤によって無効」と解されます。直ちに業者に「代金返還請求」を内容証明郵便にて送りましょう。

 

 

 

相談② 娘の債務は親の債務?

 

 

 

 

Q.一人暮らしをする二十歳の娘の購入した宝飾品80万円の返済が滞っているとクレジット会社から連絡が入りました。「娘の責任をとるのは親の努め」と、クレジット会社から執拗に支払いを迫られています。どうしたらいいでしょうか。宝飾品の販売業者に確認したところ、売買契約及び個別クレジット契約の際に交付した書面に不備はなく、また販売業者による不実告知や威迫などにより娘が誤認、困惑して買ってしまったという事実もなく、宝飾品の品質にも特に問題はなさそうですが。

 

 

 

 

A.保証人でもない限り、親子とはいえど法律上は別々の個人ですから、子の債務を親が引き受けなければならない法律上の理由はありません。また、法律上支払義務のない者に対し、あたかも支払義務があるかのように誤認させるような言動は割賦販売法でも禁じています。

 

むろん、親の資力に余裕があり、「娘に代わって弁済する」というならそれは親の自由ですが、ここはクレジット会社には「娘がご迷惑おかけして申し訳ない。真面目に働きコツコツと返済していきなさい、と娘には私からきつく言っておきます」と伝えておけば十分でしょう。

 

 

 

 

相談③ 使った布団でも返品できる?

 

 

 

Q.四日前に訪問を受けた販売員から、契約内容を記載した書面を交付されたうえで30万円の羽毛布団セットを買い、二晩寝てみましたが気に入らないので返品したいのですが。

 

 

 

A.特定商取引法では「不意打ち性」の強い取引についてクーリングオフ制度を設けています。事例は特定商取引法で規定する訪問販売に当たりますから、契約の内容を明らかにする書面を受領した日から起算して8日以内であれば無条件にクーリングオフできます。

 

また羽毛布団は「使用または消費」した場合にクーリングオフの適用除外となる「消耗品」には含まれてませんから、二晩使用したことについてもその使用利益を払うことなくそのまま返品することができます。

 

 

 

 

相談④ クーリングオフ期間を過ぎてしまったのですが

 

 

 

 

Q.10日前に訪問販売員より「家がこんなに立派なのに表札が貧相だ」とお世辞?を言われ、契約書面の交付もないままに5万円の大理石の表札を購入する契約(口頭)をしました。後で冷静になって考えれば古い表札には色々思い入れがあるので「解約したい」と申し入れたのですが、業者は「もうネーム彫りしてるし、クーリングオフ期間が過ぎている」と応じてくれません。

 

 

 

 

A.民法では保証契約を除き、口頭での契約成立を認めてはいますが、事例では民法の特別法たる特定商取引法で規定する「取引内容を記載した書面交付義務」に違反しているので、クーリングオフ期間(契約から8日間)の起算が開始しておらず、契約から10日経過していても消費者はまったく問題なしにクーリングオフ権を行使できます。直ちに配達証明付きの内容証明でクーリングオフしましょう。

 

 

 

 

相談⑤ 食べてしまった健康食品

 

 

 

 

Q.訪問販売で健康食品(クロレラ)を12箱購入(1箱1万円)したのですが、ひどく不味い上に体に湿疹のようなものが出てきたので食べてしまった残りを全部返品したい。

 

 

 

 

A.特定商取引法の訪問販売に当たる場合でも、購入した商品が特定商取引法の適用除外となる「消耗品」であり、販売業者が、「消耗品を使用または消費した場合はクーリングオフできない」旨の法定の書面を交付していた場合には、例外的にクーリングオフできない場合があります。

 

 

しかし、その場合における「使用または消費」によってクーリングオフできなくなる商品の範囲は、その商品が一般的に販売される「最小単位」が基準となり、仮にこの健康食品の販売最小単位が「1箱」であれば、食べてしまったその「1箱」以外の「11箱」はクーリングオフすることができます。また、「消耗品」についてクーリングオフができない旨の記載がない場合は、食べてしまった分を含め契約した商品全部をクーリングオフすることができます。

 

 

 

相談⑥ 「返品不可」の特約

 

 

 

 

Q.通信販売の広告をみて組み立て式のテーブルを買ったのですが、天板と脚とのビス穴がぴったり合わずあちこちでガタついています。広告に「返品不可」と書いてあったからには商品に隠れた欠陥があっても返品できないのでしょうか。

 

 

 

 

A.消費者がカタログやチラシを見て熟慮することができる通信販売では、訪問販売のような「不意打ち性」が少ないため、特定商取引法のクーリングオフは適用されません。そこで特定商取引法は2008年の改正で新たに「返品制度」を導入しました。

 

改正後は、単に「返品不可」と広告に書いてあるだけで、瑕疵(隠れた欠陥のこと)担保責任についての免責特約が記載されていない場合、販売業者はその責任を免れません。販売業者が瑕疵担保責任から免れるためには、「商品に欠陥があっても責任は一切とりません」などと消費者に分かり易く明記する必要があるのです。

 

もっとも、そのような商道徳に真っ向から反する業者などから物を買う消費者はおそらくどこにもいないでしょうけど。

 

 

 

相談⑦ チラシ配布で高収入

 

 

 

Q.「配布したチラシで商品が売れれば高歩合が得られる」と勧誘され、業務契約したうえで一枚5円のチラシを1万枚買わされました。しかし商品はまったく売れず、「高歩合」どころか買わされたチラシ代で赤字です。チラシを返品し契約も解除したいのですが。

 

 

 

A.特定商取引法で規制する業務提供誘因販売取引(いわゆる内職商法)にあたり、期間内(具体的な契約内容を明らかにする書面を受領した日から起算して20日以内)であればクーリングオフできますし、事業者に不実告知や不利益事実についての不告知があり、あるいは「絶対に儲かる」などの断定的判断の提供があり、それによって相談者が誤認して契約した場合は、誤認と知ったときから6か月、あるいは契約締結から5年以内なら契約時に遡って契約を取消すことができます。

 

事業者は原状回復義務としてチラシ代金5万円を相談者に返金しなければなりません。

 

 

 

 

相談⑧ 通常価格の半額と言われて買ったダイヤの指輪

 

 

 

Q.先日、宝石販売店の店舗にて、ダイヤの指輪を「通常価格50万円を半額の25万円にする」と販売員に言われ、デザインも気に入ったので即買いしてしまいました。ところが宝飾品に詳しい知人に見せたところ、10万円するかしないかの値打ちしかないダイヤと聞かされ憤慨しています。返品したいのですが。

 

 

 

A.訪問販売と違い、販売業者の店舗での取引では、特定商取引法で規定するクーリングオフ制度は原則として適用されません。

 

 

しかし景品表示法では、実際のものより著しく優れていると消費者が誤認するような価格表示は禁止しています。こうした二重価格の場合、契約時までの相当の期間、実際にその価格で売られていたという実績がなければならず、その実績がない場合は「不当な二重価格」ということになり、これによって消費者が誤認して購入した場合は、消費者契約法、特定商取引法のいずれによっても取消することができます。