◇農地転用・売買

 

◇農地転用許可申請

 

 

行政庁の許可や届出が必要となる農地転用業務は民事法務ではなく、行政法務(許認可業務)になるのでしょうが、相続という民事手続きに随伴して、農地法で規定する農地売買(3条)や農地転用(4条、5条)といった手続きが必要となるなら、これらを(広義の)民事法務に組み入れてみることも十分可能ではないでしょうか。

 

 

行政書士は行政書士法の規定に基づき、農業委員会に提出する申請書の作成及び、申請に必要な添付書類の収集といった煩雑な手続きを、依頼人様に代わって行うことができます。

 

 

【農地法3条】

 

 

農地(または採草放牧地)を農地のまま売買、賃貸借する場合には農地法第3条に基づく許可が必要です。許可申請は原則として当該市区町村の農業委員会にしますが、市区町村外に住所がある者が市区町村内の農地を取得する場合は、都道府県知事の許可が必要です(ただし、知事宛てであっても、申請書の提出先は当該農地のある市町村農業委員会です)。

 

 

【農地法4条】

 

 

自分の農地を自分が使用するために、宅地や駐車場、一時的な資材置き場、工場、倉庫等にすることを「自己転用」といいます。農地法第4条では、その「自己転用」に関する許可基準を定めています。農地法4条における自己転用に際しては、農地の権利移動は伴いません。

 

 

農地法4条では、農地の転用にあたりいくつかの制限を加えていますが、農地の転用面積が4ヘクタール以下にあっては都道府県知事の、4ヘクタールを超える場合にあっては農林水産大臣の許可が必要となります。

 

 

ただし、市街化区域内にある農地を権利者(農地所有者)自らが転用する場合には、転用工事に着手する40日前までに農業委員会に届出をすればよく、知事、農林水産大臣の許可は必要ありません(農地法4条1項5号)。

 

 

従いまして、農地転用でまず最初にすべきことは転用したい農地が市街化区域にあるか、市街化調整区域にあるか、その確認をすることです。なお、許可が必要なケースで事前に許可を受けず、無断転用した者は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます。

 

 

【農地法5条】

 

 

農地法第5条による許可申請とは、農地法第3条による「権利移動」の許可と、農地法第4条による「農地転用」許可を両方同時に行うというものです。

 

 

農地法第5条におきましても、許可基準や許可権者は農地法第4条と同様の規定となっています。

 

 

第4条の場合と同じく、第5条においても転用許可申請は、転用したい農地が都市計画法で定める「市街化調整区域」にある場合にのみ行いますから、転用したい農地が市街化区域にあるか市街化調整区域にあるかという調査をまずは行います。

 

 

第5条による許可申請手続きは、売主(譲渡人)と買主(譲受人)の双方が共同して許可申請書を作成(行政書士が申請手続きを代理する場合は、双方の代理人となる)します。

 

 

【許可】

 

 

作成した申請書及び添付書類を農業委員会に提出し、そこで厳しくチェックされ、追加書類や補正の必要がないとなれば、いよいよ審議に入ります。農業委員会での審議が通ると次は都道府県の審査となり、この審査に通れば都道府県知事の許可が下ります。

 

 

【待望の許可書発行】

 

 

都道府県知事の許可が下りると、市町村に許可書(不許可の場合は不許可通知)が送られてきて、そして農業委員会から申請者に連絡がいき、許可書(不許可の場合は不許可通知)が手渡されます。

 

 

しかし、ここで安心してはいけません。許可書を貰ったらできるだけ早めに転用工事に着手しましょう。仮に3か月を過ぎても工事に着手しない場合、市町村から勧告がくる場合があります。

 

 

転用終了後は、地目が農地から変わりますから、法務局への地目変更登記(土地家屋調査士の職域)を忘れずに行いましょう。